出会いの極意
マッチングアプリの同時進行は何人が正解?|罪悪感を消す心理学的アプローチ
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マッチングアプリで同時進行する罪悪感に悩んでいませんか?認知的不協和・選択のパラドックス・コミットメント段階理論から、最適な人数と罪悪感との付き合い方を心理学的に解説します。
3人の女性と同時にやりとりしていた時期がある。
Aさんとは趣味の話で盛り上がり、Bさんとは価値観が近くて安心感があり、Cさんとは会話のテンポが心地よかった。どの人にも誠実に向き合いたいと思っていた。でもある夜、Aさんとのデートの約束をした直後にBさんからメッセージが届いた瞬間、胸がざわついた。
「自分は不誠実な人間なのか」
その罪悪感が、ずっと頭の片隅にあった。同時進行は効率的だとわかっている。でも「効率」という言葉を使うこと自体に、どこか後ろめたさを感じていた。
同じように悩んでいる人は多いと思う。だからこそ、この問題を心理学の観点から整理してみたい。
「誠実でいたい」のに「効率的に動きたい」という矛盾
マッチングアプリで同時進行に罪悪感を覚える人は、実は誠実な人だ。不誠実な人はそもそも悩まない。
この罪悪感の正体は、心理学でいう認知的不協和だ。
認知的不協和とは、自分の中に矛盾する2つの認知が共存するとき、不快な緊張感が生まれる現象を指す。レオン・フェスティンガーが1957年に提唱した理論で、人間の意思決定を理解する上で最も重要な概念のひとつだ。
マッチングアプリの同時進行では、こういう矛盾が起きている。
- 認知A:「一人の人に誠実に向き合うべきだ」
- 認知B:「限られた時間で効率的に相手を見つけたい」
この2つが同時に存在するから、心がざわつく。どちらも自分の本音だからこそ、苦しい。
でも冷静に考えてみてほしい。お見合いの文化では、複数の候補者と並行して会うのは当たり前だった。結婚相談所でも、同時に複数の人とお見合いすることは推奨されている。マッチングアプリの同時進行も、本質的にはそれと同じだ。
「マッチング段階はお見合いと同じ」と再定義するだけで、認知的不協和はかなり和らぐ。
何人が最適か?選択のパラドックスが教えてくれること
「じゃあ何人まで同時進行していいのか?」
ここで参考になるのが、心理学者バリー・シュワルツの選択のパラドックスだ。
シュワルツの研究が示したのは、選択肢が増えるほど人は幸福度が下がるということ。ジャムの試食実験が有名で、6種類のジャムを並べた場合と24種類を並べた場合、購入率が高かったのは6種類の方だった。選択肢が多すぎると、人は選べなくなる。
マッチングアプリでも同じことが起きる。
同時に5人、6人とやりとりしていると、一人ひとりの印象が薄くなる。「あの話をしたのはAさんだっけ、Bさんだっけ?」と混乱する。メッセージの返信が義務になり、楽しさが消えていく。
心理学的に見ると、同時進行の適正人数は2〜3人だ。
理由はシンプルで、人間のワーキングメモリ(作業記憶)には限界がある。一人ひとりの性格、会話の文脈、関係性の段階を把握しながら誠実に対応できるのは、多くても3人が限界だ。
4人を超えると、相手を「スペック」で比較し始める。年収、職業、外見。数値化できる要素だけで判断するようになる。でも実際に結婚生活で大切なのは、数値化できない部分だ。一緒にいて安心するか、笑いのツボが合うか、沈黙が苦にならないか。そういう繊細な感覚は、相手に集中できる余裕がないと感じ取れない。
同時進行が判断を歪める:比較バイアスの罠
同時進行には、もうひとつ心理学的な落とし穴がある。比較バイアスだ。
人は比較対象があると、単独では気にならなかった差異を過大評価する。これは行動経済学者ダン・アリエリーの研究で繰り返し示されている現象だ。
たとえば、Aさんと会った翌日にBさんと会う。Bさんの方がルックスは好みだけど、Aさんの方が会話は楽しかった。するとどうなるか。
「Aさんの顔がBさんだったら完璧なのに」
こんな非現実的な比較を始めてしまう。実在しない「理想の合成人物」を無意識に作り上げ、目の前の相手が霞んで見える。
これが比較バイアスの怖さだ。単独で会っていれば「いい人だな」と感じたはずの相手を、並行して会っている別の相手の存在が曇らせてしまう。
対策は、意識的に一人ずつの時間を大切にすること。デート中は他の人のことを考えない。帰宅後に、その人との時間だけを振り返る。比較ではなく、「この人といるとき、自分はどう感じたか」に集中する。
いつ一人に絞るべきか:コミットメント段階理論
「同時進行はわかった。でも、いつ一人に絞ればいいのか?」
ここで役立つのが、マーク・ナップの関係段階モデルを応用したコミットメント段階の考え方だ。
段階1:マッチング〜メッセージ(同時進行OK)
アプリ上でのやりとり段階。ここはお見合いの写真交換と同じフェーズだ。複数人と同時にやりとりしても、誰も傷つかない。罪悪感を持つ必要はまったくない。
段階2:初デート〜2回目のデート(2〜3人に絞る)
実際に会い始めたら、3人以下に絞る。一人ひとりとの時間の質を確保するためだ。この段階で感じる「もっと知りたい」という気持ちを大切にする。
段階3:3回目のデート以降(1〜2人に集中)
3回会えば、相手の人となりがかなり見えてくる。ここからは量より質。「この人とならもう少し深い話ができそうだ」と感じた人に集中する。
段階4:告白・交際開始(一人に決める)
お互いの気持ちが固まってきたら、一人に決める。ここまで来たら、他の人との連絡はきちんと終わらせる。それが同時進行をしてきた人間の責任だ。
大切なのは、段階に応じて同時進行の人数を自然に減らしていくこと。最初から一人に絞る必要もないし、いつまでも複数人を抱え続ける必要もない。
罪悪感との付き合い方
それでもまだ罪悪感が消えない、という人へ。
いくつかの視点を提案したい。
「選ぶ」ことは「捨てる」ことではない。 同時進行で出会った人のうち、最終的に選ばなかった人との時間が無駄だったわけではない。その出会いを通じて、自分が本当に求めるものが明確になった。相手にとっても同じだ。
相手も同時進行している可能性が高い。 マッチングアプリの利用者調査では、7割以上が複数人と同時にやりとりしているというデータがある。あなただけが不誠実なわけではない。それがこのプラットフォームの前提だ。
罪悪感があるからこそ、丁寧に接する。 罪悪感を感じること自体は悪いことではない。むしろ、その感覚があるからこそ一人ひとりに丁寧に向き合おうとする。それは誠実さの証だ。
質重視のアプローチで、同時進行の負担を減らす
同時進行の疲弊を減らすもうひとつの方法は、最初から出会いの質を上げることだ。
誰でも登録できるアプリで100人にいいねを送り、10人とマッチングし、5人とやりとりし、3人と会う。このプロセス自体が消耗する。量を追うほど、一人ひとりへの集中力が下がり、結果的に「誰とも深くつながれない」という状態に陥りやすい。
東カレデートのような審査制のサービスは、この問題を構造的に解決している。入会時点で審査を通過した会員だけが利用するため、最初からある程度の質が担保されている。「この人は本当に真剣なのか?」という疑念にエネルギーを使わなくて済む。
量ではなく質で勝負する環境に身を置くと、同時進行の人数も自然と少なくなる。2〜3人の厳選された相手と、じっくり向き合えるようになる。これは心理学的にも理想的な状態だ。
次のステップ:自分の婚活スタイルを見つける
同時進行に正解はない。ただ、心理学が教えてくれるのは「自分の心理的キャパシティに合った人数で、段階的に絞っていく」のが最も健全なアプローチだということだ。
罪悪感を感じるなら、それは自分が誠実であろうとしている証拠だと受け止めていい。
大切なのは、その誠実さを活かせる環境を選ぶこと。闇雲に数を追うのではなく、質の高い出会いに集中すること。そして、段階に応じて自然に一人に絞っていくこと。
婚活全体の進め方については30代からの婚活完全ガイドで詳しくまとめている。恋愛における心理学の基礎を知りたい方は大人の恋愛心理学入門も参考になるはずだ。また、実際のデートでの会話に不安がある方は心を掴む大人の戦略的会話術も読んでみてほしい。
同時進行に悩んでいるということは、あなたはすでに真剣に婚活に向き合っている。あとは、自分に合ったやり方を見つけるだけだ。